正道有理のジャンクBOX

経験から学ぶことも出来ないならば動物にも及ばない。将来の結果に役立てるよう、経験や知識を活用できるから人間には進歩がある。

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女性蔑視発言を開き直る森喜朗を解任しろ

日本社会には自浄作用も当事者能力も無いのか

東京オリ・パラ組織委員会の森会長が女性差別発言をしてから一週間が経っても、日本オリンピック委員会も政府も全く対応不能に陥っており、「世界から最も遅れた国」としての認知度だけが高まっていく。

最早、森喜朗個人の価値観の問題ではない。このような価値観を生む底流に、それを許してきた日本社会の問題が根深く存在していることを突きつけられている。

東京オリンピックが行われるか否かに関わらず、一人でも多くの人がこの問題を考え、日本が変わる契機になれば違った意味でオリンピックの理念に一歩近づくことになるのかもしれない。

ここではそのための素材として、JOC公益法人日本オリンピック委員会)と公益法人東京オリ・パラ競技大会組織委員会という紛らわしいが似て非なる組織について見てみようと思う。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、公益財団法人日本オリンピック委員会JOC)と東京都により2014年1月24日に一般財団法人として設立され、2015年1月1日付で公益財団法人になった。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

評議員

川淵三郎日本サッカー協会相談役)
遠山敦子トヨタ財団顧問、元文部科学大臣
木村興治(JOC名誉委員)
福田富昭JOC名誉委員、日本レスリング協会会長)
長谷川明(東京都副知事
梶原洋(東京都副知事

※ この評議員は、会長、副会長を含む理事の選任権を持っている。

菅総理は東京オリ・パラ組織委員会の顧問会議議長だ

そして、菅総理は国会答弁で盛んに「公益法人の独立」を強調したが、責任逃れも程々にすべきだ。
また、自民党の広報本部長として、唯一自民党の女性理事として組織委に名を連ねている丸川珠代よ、いつまで沈黙するつもりか!

この、公益法人東京オリ・パラ組織委員会には、顧問会議として内閣総理大臣と衆参議院議長が名を連ねており、特別顧問には麻生太郎はじめ7名の閣僚や財界人が入っている。しかも、驚くべきことに安倍晋三は「名誉最高顧問」というのだ。なんという不名誉な事だろう!!

 ・名誉最高顧問 元内閣総理大臣 安倍晋三
 ・最高顧問、議長 内閣総理大臣 菅義偉
 ・最高顧問 衆議院議長 大島理森
 ・最高顧問 参議院議長 山東昭子

また、特別顧問は以下の通り。
麻生太郎、櫻田謙悟、加藤勝信堤義明、中西宏明、三村明夫、吉野利明

そして、顧問には野党を含む国会議員の多数が名を連ねているのだ。どこが「別法人だから関与できない」だよ! 菅総理は顧問会議議長として、会議を招集し森会長の辞任を勧告することだって出来るではないか

JOCの上位に立つ東京オリ・パラ組織委

JOC日本オリンピック委員会)の会長は山下泰裕氏である。だが彼は東京オリ・パラ組織委の中では副会長である。この一事をもって明らかなように、国際組織であるJOC公益法人日本オリンピック委員会)よりも、公益法人東京オリンピックパラリンピック組織委員会の位置が高いのである。

なぜならJOCはオリンピックにアスリートを送り出す組織であり、東京2020組織委員会はオリンピックというイベントの財源を調達し、アスリートに競技をさせて利益を生む組織なのだ。東京2020組織委員会=東京オリ・パラ組織委員会にとって、アスリートもボランティアも金儲けのための人材に過ぎない。
そして、これには電通などが大きくかかわっているは周知のことであろう。

一方、JOCにもスポーツ振興団体や多くのスポンサー企業・財界などからの委員が参加する「評議員会」がある。しかし、これも実質的には「東京オリ・パラ組織委員会」の下部機関であり、賛助機関のようになっている。 
事実、森喜朗氏の女性蔑視発言は、この臨時評議員会の席上で行われたものだった。

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森会長の調整能力とは 集金力と利権誘導能力なのか?

森発言を擁護する者たちの理由が、「余人をもって代えがたい」とか森氏の調整能力を上げている。しかし、ここで言っている「調整」とは何を指すのか。

東京オリ・パラ組織委員会の役員構成を見ても明らかなように、名誉会長・御手洗富士夫経団連名誉会長)を筆頭に、理事にはそうそうたる財界人が名を連ねている。JOC評議員も大半はスポーツ振興団体の肩書を持つ人で占められているが、三菱電機(株)、イオン(株)、トヨタ自動車(株)などが名を連ね、日本商工会議所経済同友会も議員を出している。また、スポーツ振興団体はそれ自身としてのスポンサーをもっており、このすそ野は広い。

つまり、こうした広範な利権に絡む方面に顔が利く(言ってみれば集金能力が高い)ことを「調整できる」というのだろう。

おそらく、この人たちは資金を集めること、利権を誘導する事がオリンピックの成功にとって最も重要なのだと信じて疑わないのだろう。この人たちにとっては、端から女性の意見など聞こうとは思わないだろうし、「オリンピックの理念」など眼中にないから、そもそもアスリートの声さえ聞く気はないに違いない。

神の国」発言に通じる家父長制的なアナクロニズム

森喜朗氏の「女性差別」発言は根が深い。それは依然として日本社会にはびこっている無自覚な女性差別の本質に関わるものであり、森氏の「神の国」発言にも通じている。 

この「神の国」という発想は国家神道であり、天皇万世一系とし、家父長制によって貫かれた「国体」を標榜する思想である。
明治憲法下の日本では、天皇を頂点とし家父長的家族制度を土台とする男尊女卑が貫かれてきた。それは戦後においても戸籍法として生き残り、結婚や相続、子どもの認知をはじめ、風俗習慣の中で民衆の意識を縛りつけてきた。
夫婦別姓が長い間進まないのも、このような価値観の支配から脱却できていないからだ。

仮にオリンピックが出来なくなても、グローバルスタンダードを日本に迫る契機になるならば、歴史的な大会をやり遂げたのと同じほどの価値があるといえるだろう。