正道有理のジャンクBOX

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相模原障がい者殺傷事件 未だに見解を述べない安倍政権

相模原市障がい者施設で起きた殺傷事件について、安倍晋三首相は26日の党役員会で、「多数の方が亡くなり、重軽傷を負われた。真相を究明しなければならず、政府として全力を挙げたい」と述べた。

また、菅義偉官房長官は記者会見で、事件に関し「現在のところ、警察から事件の被疑者とイスラム過激派との関連を示す情報は把握していない」と語った。

言うにこと欠いて、重度障がい者が選別的に襲撃された事への憤りを示すのではなく、「イスラム過激派のテロではなさそうだ」ということでホッとしている心情を吐露したのだ。

  

28日に政府はこの事件をうけて関係閣僚会議を開いた。

安倍晋三首相は会議で「事件を徹底的に究明し、再発防止、安全確保に全力を尽くしていかなければならない」と強調。その上で、「施設の安全確保の強化、措置入院後のフォローアップなど必要な対策を早急に検討し、できることから速やかに実行に移してほしい」と指示した。

安倍首相からは、いずれも多くの人命が失われた事への一般的な追悼だけしか伝わってこない。

27日に犯行現場となった「津久井やまゆり園」を視察した塩崎恭久厚労相措置入院に関し、「警察との連携を視野に、行政ややまゆり園との連携が適切だったか検証していく。入院の原因は大麻だったということで、大麻(中毒)へのフォローアップを十分に考えていかなくてはいけない」と述べ、措置入院のあり方を問題にしたうえで、植松容疑者の犯行があたかも薬物によるものであるかのよう言っている。

ここには2つの問題がある。

第一は、植松容疑者をして障がい者の殺害を実行に至らしめた、その価値観について一切言及しようとしないことである。事前に衆議院議長公邸を訪れ、犯行計画書を届けた人間には、それを正当化するべき積極的な理由=価値観が存在したことは明らかだ。

措置入院」をさせれば考えを変え、思い止まるとでも思ったのか。

また、退院の判断が甘かったとか言っているが、そもそも彼自身の考え方が自傷他傷の危険性を持っていたとしても、予防拘禁としての「措置入院」が医療行為ではないこと、したがって精神科医には退院の時期の判断など出来るはずもないことだった。

その判断ができるとすれば、それは警察権力だけだろう。

したがって第二には、「措置入院の在り方」の検討とは措置入院を警察主導で行うことを意味し、やがては危険な思想の持ち主(政府に都合の悪い人物)=精神異常者として「公共への危険を排除する」という名目で「措置入院」(実質的な予防拘禁)させることが当たり前といった世論誘導に道を開こうとしているのだ。

 

この事件は、重度障がい者を社会的に抹殺することが国家のためだという、とんでもない優生学的思考を根拠として計画的に行われた犯行であり、このような考え方を放置すればヘイトクライム、すなわち白色テロに道を開くものである(すでにそのような性格を有している)。仮に、植村被告が薬物使用者であり、妄想に囚われ、自分の計画に酔っていた部分があったにせよ、決して一般の通り魔殺人や精神異常者、あるいは社会的怨恨や不満を晴らすためにやったというような事件ではない。

であればこそ「障がい者を排除すること=正義」として正当化するような価値観とそれを生み出す社会的背景・土壌こそが問題にされなければならない。

卑しくも、安倍晋三が一国の首相であるならば、「イスラム国」のテロに対して宣言したように「いかなるテロにも屈せず」ヘイトクライムから障がい者を守るために政府は万全の措置をとると言うべきではないのか。

各国の首脳がただちにメッセージを発しているときに、公式な政府見解もコメントも出していないのは、この事件の本質を見ようとしないか敢えて隠そうとしているからだとしか思えない。

 

このような価値観を社会に蔓延させたのは安倍政権とその取り巻きによる排外主義、差別主義、国家主義イデオロギーの拡散である。

事実、この事件の後には安倍政権の応援団とおぼしき者たちが、ネット上で植松容疑者に同調するような書き込みをしているが、彼らの多くはこの間ヘイトな発言を繰り返してきた人たちである。

 

★ネットで広がる「植松容疑者の主張はわかる」の声

http://lite-ra.com/2016/07/post-2459.html

自民党ネットサポーターズクラブ会員を称する者のブログが、事件後「重度障害者を死なせることは決して悪いことではない」なるタイトルの文章を公開。

 

新しい歴史教科書をつくる会藤岡信勝さんが相模原殺傷事件でも人種差別デマ「植松聖容疑者は在日」

  http://matome.naver.jp/odai/2146963651880379101

 新都知事小池百合子を応援した「つくる会」の藤岡は、あろう事か自分たちが煽ってきた排外主義の恐ろしい結末におののいたのか。障がい者差別抹殺に手を染めたのが在日であるかのような許し難いデマを流すことで自らの責任を逃れようとしている。

 

安倍自民党政権がヘイトスピーチ社会を作っている。・・・

http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/e5999b735d9c65ca0561f0cae7318e2a

 

精神障害者ら7.9万人、受給減額・停止も 年金新指針で ―医師団体推計

                                                                 2015/12/12 21:43 日経新聞

 

安倍政権下における差別的、排外主義的イデオロギーの拡大、弱者切捨ての政策は、本質的には自民党日本会議の人権に対する考え方、憲法観にかかわる問題である。

本来、憲法上すべての人が等しく保障されるべき基本的人権について、彼らは国家=公益の下に置き、国家的利益に貢献できないものは排除し切り捨ててもかまわない、という公益論を前面に押し出そうとしている(この考え方は自民党改憲草案の基礎になっているものでもある)。

従って、安倍政権が戦争と改憲への衝動を強め、その前提として戦後憲法の下で培われた国民の価値観を作り変えるために、右翼的市民運動、SNS、メディア戦略を駆使して、排外主義、差別主義、社会的弱者排撃のイデオロギーを振りまいているのである。

こうした攻撃は、新自由主義の下での格差の拡大と民営化・規制緩和によって、本来社会全体の力で護られなければならない託児、老人介護、障がい者施設、医療現場等々に極限的な矛盾を集中させている。とりわけ、そこで働く労働者には低賃金と劣悪な労働条件、慢性的な人員不足。更にいつ失業するかも分からない不安が襲い掛かっている。そうしたストレスに追い詰められ、他人を蹴落とし、貶め、差別することで自分の居場所を見つけようとする者が現れたとき、自己を正当化するための論理が排外主義的、ヘイト的なイデオロギーに他ならないのである。